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2008年9月 3日 (水)

藪をこぐもの──藪山望郷篇

最近、土日の仕事が多いです。人様が休んでいるとき働いている以上、人様が働いているときに休ませてもらうよう上司に直訴し、首尾よく休みを勝ち取ったなら釣りに行くに限ります。

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:水中は涼し気ですが、じっとり蒸し暑い一日でした。:不快指数をさらに高める蜘蛛の巣攻撃。オーセンティックなFFMはあまり来たがらないと思われる藪沢。

せっかくの平日釣行だったので、「モシ アナタガ オヒマデシタラ ツリデモ ドーデスカ?」近所の釣り師に声をかけてみました。ただし、大雨だ、秋の荒食いだ、遡上だ、尺やまめだ!と、微妙に興奮気味なのを悟られないよう何食わぬ顔をして……。「ハイ ワカリマシタ ヒマダッタラ デンワシマス」とはいつものパターン。忙しいのか暇なのかよく分からないこの人、その辺をあまり詮索する気もありませんが、結局のところ水曜日の早朝、寝不足気味の二人の釣り師は夜の街道をひた走っていたのでした。

とくに行き先は決めていませんでしたが、「たまにはkechida君を釣れるところに連れて行ってあげたら」というありがたい言葉が花道から一時退避中のマニアの口から発せられたとか……、られなかったとか……。留守中に人様の釣り場を荒らすのは本望じゃありませんが、お墨付きをいただいたなら、行きたくなるのが釣り師の性。即決定です。

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即乾ズボンを忘れ、お出かけ用の半ズボンで釣ることに……。:カゲロウと釣り師の頭部に巻かれた手ぬぐい(かまわぬ謹製)。:苔生す谷と釣り師。

いまだ「体臭」のようなものが滲み出す(抹香臭かったりもするわけですが)里の集落を通り抜けると、いつの間にか谷は狭まり、チャラチャラだった流れは落差のある山岳渓流のものへと変貌していました。車止めに到着していざ準備をはじめると……、あれぇズボンがない、靴下もない……。あり合わせの服でなんとか間に合わせ、ありとあらゆる植物が猥雑に生い茂る森の小径をざくざく歩くこと数十分。木々が鬱蒼と茂る小谷は、「いまだ口にされたことのない秘密」を内に隠しているかのようなたたずまいです。しかし、いくら毛ばりを流せど、2~3度小さな黒い魚が浮上してきたものの、魚の反応は乏しく、Mさんも小さなうぐいを数尾掛けただけで、肝心のやまめは釣れません。あまりの反応のなさと藪の濃さに撤退を決意。現れては消える獣道をたどって杣道へ逃れ、ドロドロになって森から抜け出したのでした。

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人間と共存してきた森。:道……のようなもの。:猥雑な夏の低山。

まだ昼前、平日だから人もいないだろうと次ぎに向かった大場所は、予想に反して先行者あり。一歩進んで二歩下がるってな感じで、来た道を戻り、最初に入った谷を通り越し、峠を越えた先に、またしても里の中を流れるチャラチャラの川が現れてきました。谷の入口ののんびりしたたたずまいのグロサリーでじゃがりことポカリスエットを仕入れたついでに、店のおばちゃんに聞いてみました。

「この間の雨はけっこう降りました?」
ちょっとだけ。もともとこの辺は雨が少ないから」
「えっ、そーでしたか……」

たしかに最初に入った沢は平水だったみたいだし、山肌もどちらかといえば渇き気味でした。大水後、濁りがとれ、水が引きはじめた沢で大ヤマメ入れ食い、というのが私のドリームプランでしたが、絵に描いた餅でしかなかったようです。

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やまめが釣れました。従来、郡内地方を含む甲州では朱点のあるなしを特に区別せず、やまめと呼び習わしたそうで、私もそれを模倣しようかと……。

とはいえ、もうどこかへ移動する気力もなく、「一時間やって反応が悪かったら今日はオシマイにして、温泉にでも入って早めに帰りましょう」と提案してみました。その後一時間……、けっして反応が良かったとは言い難かったもの「今日はダメです。終わりにしましょう」とはお互い口にすることもなく、黙々と釣り上がったのは予想通りの事態です。滝をいくつか巻きました。一時、入れ食いになりました。ただし、魚は小さいです。大きな落差のある滝を巻きました。魚がおっきくなりました。Mさんが良型を数尾、私も一尾。バラシは無数……、これもまたいつも通り。やがて流れは細くなり、薄暗い谷はさらに暗くなりました。

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:ヌルヌルの大岩がよく発達した谷でした。:滝壺を探る釣り師。:谷を抜け、帰り支度を整えた頃、日はとっぷり暮れていました。

藪道探し名人のMさんをしても、この谷から抜ける道を見つけ出すことはできず、MANIAなあの人は、暗くなるまで沢を詰め、も うどうしようもなくなって左岸を適当に上ったら分水嶺を越え、向こう側へ降りる道を見つけることができたものの、車まで戻るには数時間を要したとか……。 そんなこんなで、われわれもまた、これこそは道に違いない、と藪の中のかすかな踏み跡をたどっては道を失い、そんなことを数度繰り返した結果、やはり水線 通しで戻るしかないと諦め、ヌルヌルの大岩が点在する光と色を失った薄暗い谷をドロドロになりながら抜け出したのでした。もう、二度とこんな辛い思い は……、いつかまた……、やっちゃうかも……!?

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